オーストラリアで仕事を探す際、「無給トライアル」に遭遇することがあります。
これは、雇用主が採用前に求職者に一定期間、無給で仕事を試してもらうというものです。
ホスピタリティ業界(飲食店など)での無給トライアルは、特によくありますね。
では、この無給トライアルは合法なのでしょうか、それとも違法なのでしょうか?
結論から言ってしまうと、無給トライアルは合法の場合もあれば違法の場合もあります!
では、どういった場合に合法であり、逆にどういった場合に違法となるのかを解説していきたいと思います。
これからワーホリでお仕事をする場合は、雇用主にいいように扱われないよう無料トライアルのルールをしっかり覚えておきましょう。
無給トライアルとは?
無給トライアルとは、雇用主が労働者に賃金を支払わず、一定期間の間その労働者のスキルや適性を評価するために仕事をさせることです。
一般的に、カフェやレストラン、接客業などでよく見られます。この試用期間中、労働者は通常の業務を行い、雇用主は彼らの能力を評価します。
このような試用が無給で行われる場合、その合法性がしばしば問題になります。
オーストラリアの法律と無給トライアル
オーストラリアでは、公平な雇用条件を保証することを目的に労働に関する法律が明確に定義されています。労働者は働いた時間に対して適切な報酬を受け取る権利があるため、基本的に「無給」での労働は違法です。
では、無給トライアルについてはどうなっているのかを具体的に見ていきましょう。
無給トライアルが合法となる場合
無給トライアルが合法とみなされる状況はあります。
オーストラリアのフェアワーク・オムブズマン(Fair Work Ombudsman)によると、無給トライアルが合法であるかどうかは、トライアル期間中に労働者がどのような業務を行っているかに依存します。
主なポイントは次のとおりです:
- 観察のみの場合
トライアルの目的が単に求職者のスキルや適性を観察するだけであり、実際の労働や業務が行われていない場合、そのトライアルは無給で合法とされることがあります。例えば、カフェでコーヒーを作る方法を学んでいる間に観察される場合などです。 - 短期間である場合
無給トライアルは非常に短期間で、通常1~2時間に限られます。これ以上の時間を求職者に無給で働かせることは、違法となる可能性が高いです。
無給トライアルが違法となる場合
求職者に「実際の業務」をさせる場合、無給トライアルは違法と見なされることがあります。
具体的には、次の状況で無給トライアルは違法とされる可能性が高いです:
- 実際に業務を行う場合
求職者が通常の従業員と同じように仕事をこなす、つまり顧客にサービスを提供したり、製品を販売したりするなど、実際の業務を行う場合には、その労働に対して賃金を支払う義務があります。 - 仕事に必要なスキルを証明する必要がない場合
無料トライアルはあくまでも求職者のスキルや適切を観察するためのものであり、スキルを証明する必要がない場合は、適切な最低賃金を支払う必要があります。 - トライアル期間が長期間にわたる場合
無給トライアルが何日間にもわたる、あるいは複数時間を超える場合、その無給の労働は違法となる可能性が高いです。フェアワーク・オムブズマンは、必要以上に長い無給トライアルを行うことを厳しく禁止しています。
皿洗いで半日の無給トライアルというのを見たことがあります。
これは完全に違法ですね。皿洗いはスキルの証明が必要がないし、それを半日もさせるというのはもはや実際の業務に相当します。
無給トライアルが合法/法となる場合の事例
フェアワーク・オムブズマンのサイトには、具体的にどういった場合が合法/違法であるかの事例が記載されていますので、それをご紹介したいと思います。
無給トライアルが合法な事例
合法な無給トライアル(例1)
あるカフェが、経験豊富なバリスタを募集しています。
面接後、オーナーは応募者にコーヒーの淹れ方のスキルを試すために約 1 時間残ってほしいと頼みました。オーナーは、応募者がカプチーノとソイ ラテの違いを理解しているかどうか確認したかったのです。
ここでの無給トライアルは、応募者のスキルの質を見定めるためのものとなっています。このため、この場合の無給トライアルは採用プロセスの一部として構成されていると判断され、合法とみなされます。
合法な無給トライアル(例2)
ジャックは地元の板金工場で職人アシスタントの職に応募しました。
応募者の選考プロセスの一環として、ジャックは面接日に車と板金の知識があることを示す必要があるとオーナーに言われました。それが採用の最低条件であることから、ジャックは同意します。
面接当日、ジャックは車のボディ修理をしている職人の一人についていくように言われます。職人はジャックを観察し、安全に作業する方法と適切な工具の使い方を把握しているか確認します。ジャックは自分がその仕事の最低基準を満たしていることを示し、オーナーはジャックに仕事をオファーします。
この場合、ジャックが行った短いトライアルは彼のスキルを実証するのに妥当であり、トライアルに対して報酬を支払う必要はありません。
無給トライアルが違法な事例
違法な無給トライアル(例1)
ジェーンは新聞の広告で、地元のレストランがフルタイムの厨房スタッフを募集しているのを見ました。
その仕事に応募したとき、雇用主は彼女に 2 週間の無給の試用期間で働いてもらい、その後彼女がその仕事に適しているかどうか判断すると言われました。その仕事につきたかったジェーンは、その条件を引き受けました。
試用期間後、雇用主はジェーンに、彼女はその役職に適していないと告げ、働いた時間に対する賃金は一切支払いませんでした。
ジェーンは、全期間を通じて生産的な仕事をしていたため、働いていた時間に対しては全て賃金が支払われる必要があります。もし賃金が支払われない場合は違法な無給トライアルとみなされます。
違法な無給トライアル(例2)
ジェシカは大学の掲示板に、キャンパス内のカフェでバリスタの求人広告を見つけました。
このポジションは、月曜日、火曜日、木曜日の午前 7 時から正午までの時間帯で募集しています。採用されるには、少なくとも 3 年間の経験があり、幅広い種類のコーヒーを作ることができる必要があります。
面接でカフェのマネージャーは彼女に、仕事の適正を判断するために、最初の 1 週間は無給で働く必要があると告げました。また、最初の 1 週間にどのシフトも働けない場合は、前日の夜にマネージャーに伝え、彼女のシフトをカバーしてくれる人を手配する必要があるとも言っています。
「試用期間」とジェシカに課せられた要件から、この取り決めは雇用関係であることが示唆され、彼女は働いた全時間に対して適切な最低賃金をもらうのが妥当です。
無給トライアルを打診された際の注意点
無給トライアルを受ける際には、以下の点に注意しましょう。
- トライアルの目的を確認する
雇用主に、なぜ無給トライアルが必要なのか、どのような業務を行う予定なのかを確認しましょう。観察のみの場合は無給でも合法ですが、実際の労働を要求される場合は賃金を請求する権利があります。 - トライアル期間の長さを確認する
無給トライアルが短時間に限られていることを確認しましょう。1~2時間を超える場合、適切な賃金が支払われるべきです。
面接時に無給トライアルを要求された際に、こういったことを雇用主に確認するのはかなり難しです。始める前からごちゃごちゃとうるさいことを言ってくる人は、下手したらその場で落とされることもあります。
とは言え、極端に長時間の無給トライアルの場合は指摘すべきですね!
結論
オーストラリアで無給トライアルを行うことは、特定の条件下では合法ですが、多くの場合違法になる可能性が高いです。特に、求職者に実際の業務を無給で行わせることは違法です。
無給トライアルを求められた場合は、業務内容やトライアルの長さについて明確にすることが大切です。
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