海外在住者にお聞きしたいのですが、皆さんは大きな病気になった時、住んでいる国で治療をしますか?それとも日本に帰国して治療をしたいと思いますか?
ちょっとした病気であればほとんどの人は現地の病院で治療を行うのではないかと思いますが、命に関わる病気や難しい手術を伴う病気の場合は日本への帰国を考えてしまう人もいるのではないでしょうか。
僕は脳外科手術をオーストラリアで受けるか日本で受けるかでさんざん迷って、最終的に日本で受けることにしました。
この手術に関しては、気が向いたらまた別の記事で書きます。
実際に大きな病気にかかってしまうと、どこで治療をすべきかはとても悩ましいです。生活の基盤ができている海外を離れて日本に帰国した方が良いのか、海外で仕事をしながら近くの病院に通うべきなのか、いろいろなモノを天秤にかけて判断をすることになると思います。
本記事では、海外在住者が日本に帰国して病気の治療をするメリット・デメリットについて紹介します。自分がどこで治療するかの判断をするための一助になればと思います。
また、日本で治療することこ決めた際の行政手続についても、あわせてまとめています。
この記事で示す行政手続きは、申請者本人が日本国籍であり、日本に住民登録ができる家(住まい)があることが前提になります。
大きな病気は現地(海外)で治療すべきか、日本で治療すべきか
大きな病気になった時に日本で治療をする場合には言葉の壁や費用面などの大きなメリットもあれば、逆にデメリットもあります。
ここでは日本で治療することのメリットとデメリットについて整理してます。人それぞれ状況は違いますので、海外で治療すべきか日本で治療を受けるべきかはメリット・デメリットと各個人の諸事情を含めて勘案する必要があるかと思います。
海外在住者が日本で病気の治療をするメリット
日本で病気の治療をするメリットをまずは紹介します。
医療専門用語が日本語(言葉が通じない不安がない)
長いこと海外で生活していても、言葉の壁はなかなか払拭できないものです。日常会話は問題がなくても、専門用語となると多くの方が理解するのに苦労をします。
自分の命に関わる医療専門用語となると、なおさら理解できないことによって不安に陥ります。
その点、日本であれば例えあまり馴染みのない医療用語であってもほとんどの人は何となく理解できてしまいます。
言葉の壁がないことによる安心感は、日本で治療を受ける大きなメリットですね。
すぐに専門医に見てもらえる
日本では整形外科の病院に行けば整形外科医に見てもらえるし、皮膚科の病院に行けば皮膚科医に見てもらうことができます。また、大病院でも紹介状なしで専門医に見てもらうこともできます(ただし紹介状がない場合は別途費用がかかる場合あり)。
一方、海外ではいきなり専門医に見てもらうことはかなりハードルが高いです。オーストラリアだとまずは一般開業医(General Practitioner-GP)に見てもらい、そこでさらなる検査や専門的な治療が必要と判断されると専門医(Specialist)を紹介してもらえます。この最初に見てもらうGPが誤った診断をしてしまうと専門医までたどり着くことすらなかなかできません。
すぐに専門医に見てもらえるというのは日本に住んでいるともはや当たり前のことだが、海外組からすると実にありがたいシステムです。
医療費(個人負担額)が安い
医療費に関しては国によってかなり大きな違いがあるので一概に日本の方が安いとは言えないですが、それでも国民健康保険に加入していれば、個人の負担額はかなり安い方になるのではないでしょうか。
オーストラリアに関してはメディケア(Medicare)に加入していれば、公立病院の入院費用は全額負担されるし、外来の医療費も大部分がカバーされます。このため、個人が負担する医療費は日本とあまり違いがないと考えて良いと思います。
一方、アメリカように自由診療(医療保険制度が適用とならない全額自己負担の診療)を採用している国と比較すると日本の医療費(個人負担額)は激安になります。
日本だと主治医や病院の評判が簡単にわかる
盲腸や白内障、その他の比較的一般的に行われている手術であれば主治医の技量や評判はそれほど気にするまでもないと思うが、難しい手術となるとそう言うわけにもいきません。主治医がどれだけの臨床数の経験があるのか、病院としての評判が良いのかなどかなり気になるところです。
これらの情報は日本だとSNSや個人ブログなどから比較的簡単に情報を集められます。特定の病気に対する治療をどこの病院(医師)が得意としているのかなど、調べればすぐにわかるので、これは日本で治療をする大きなメリットになります。
ちなみに海外だとこういった情報の収集はかなり難しいです。家の近くのスペシャリスト(専門医)のサイトまでは比較的簡単にたどり着けはするのだが、その先の医師の情報・評判まで調べ上げるのはかなり困難です。
もしかしたら検索の仕方が悪かったのかもしれませんが、僕は自分の住まいの近くの専門医の評判までは調べ上げることはできませんでした。
海外在住者が日本で病気の治療をするデメリット
海外在住者が日本で病気の治療をしようと考えた場合、そのデメリットを事前に理解しておく必要があります。これらのデメリット以上の価値が日本での治療にあるのかをしっかり考えて判断しましょう。
日本滞在中の費用が高額になる場合がある
日本に帰国して病気の治療をする際の大きな障壁になるのが滞在先の確保です。
実家に寝泊まりできるのであれば、その時点でこの問題は解消されます。
実家がなかったり泊まれる状況でない場合は、ホテルやマンスリーマンションを利用せざるを得なくなります。結果、日本での病気の治療費の総額が大幅に上がるので、かなり厳しい状況になることが考えられます。
滞在先としてマンスリーマンションを利用する場合は、10万円~15万円くらいが東京での家賃相場になります。
手術後の経過観察や定期健診が難しい
病気で手術を受けた場合、必ずあるのが術後の経過観察です。病気の種類にもよるが、半年後、1年後、3年後といったタイミングで実施されます。
海外在住者が日本で治療をした場合は、その度に飛行機で帰国する必要があるので、この費用がばかになりません。
1年に一回くらいの頻度で日本に一時帰国しているのであれば、そのタイミングで定期健診を受けるのが良いですね。
術後の経過観察は治療の一環であることから、本来は手術を受けた病院で診てもらうのが最も良いが、通うことが難しい場合は在住の国での定期健診でも問題ないかは主治医に確認するようにしましょう。
入院の際の付き添い、手術の立会が必要
日本で入院や手術をする場合、病院からは入院当日の付き添いや手術当日の家族(親族など)の立ち合い等の保証人を求められることが多いです。これは手術中の万が一のことを考えてのものです。
日本にる親や兄弟に頼むことができれば簡単に済むが、一緒に海外で生活している妻や子に頼む場合は彼女らも一緒に日本に帰国する必要が生じます。この時の費用(航空券代、滞在費)がかなり高額になることを念頭に置いておきましょう。
僕の場合は、手術日に合わせて妻と息子にオーストラリアから来てもらったわけだが、二人の往復航空券代だけで約20万円かかりました。痛い出費です…
海外で保険に加入している場合、提出する証明書の作成が難しい場合がある
海外のプライベート保険加入者が、日本での治療の保険請求をしようとした際には英語で記載された診断書、治療費請求明細書および領収書が必要になります(具体的に何が必要かは各自保険会社に確認してください)。
日本では通常英語版の診断書や治療費請求書などは作成していないので、これらの資料作成は別途医師に依頼する必要が生じます。場合によっては資料作成費がかかることもあります。
海外在住者が日本で治療を受ける場合は、こういった保険関係でもちょっと面倒なことになったりします。
日本で病気の治療をするためにすべき行政手続き
日本で病気の治療をする大きなメリットは医療費の安さにあります。正確には医療費が安いというわけではなく、国民健康保険でカバーされる割合が大きいため自己負担(原則3割負担)が小さいということです。
この恩恵を受けるためには、日本帰国時に国民健康保険に加入する必要があります。
ここでは、病気治療のために日本帰国時にすべき各種行政手続きについて解説していきます。
国民健康保険への加入は日本国籍を捨て外国籍を取得した日本人でも加入できます(日本に3ヶ月を超えて居住する場合)。ただし医療を受ける目的の場合は、外国籍の日本人は国民健康保険に加入できないので注意が必要です。詳しく知りたい場合は、各自治体に問い合わせましょう。
帰国時にすべき行政手続き
海外から帰国した際には、帰国日から14日以内に転入先市区町村の役所または出張所へ転入届けを提出しましょう。手続きに必要なものは以下に記載するが、自治体によっては微妙に違うこともあるので、必ず自身が転入届けを出す市区町村のホームページを確認しましょう。
また、自治体によってはそもそも「1年未満の滞在時は転入届を受理しない」とホームページ上に記載されていることもあるので、注意しましょう。
- 本人確認書類(日本の免許書、パスポート等)
- 印鑑
- 戸籍謄本(全部事項証明書)
- 戸籍の附票の写し
- 年金手帳(ない場合は基礎年金番号がわかるもの)
- 帰国日が確認できる書類
(入国スタンプの押してあるパスポートや航空チケットの半券など)
市区役所で転入届を記入し、上記書類と共に受付窓口にもっていくとすぐに転入手続きが行われ、国民年金と国民健康保険の手続きもあわせて案内されます。
国民年金の加入に加入すると、その時点から国民年金保険料の支払いが生じます。金額は1ヶ月当たり16,520円(2023年)です。ただし、前年度に日本国内で所得がなければ国民年金保険料の免除・納付猶予を申請することができます。申請して審査を通過すると、1年間保険料が免除されます。
審査にはしばらく時間がかかるので、免除の通知が届くよりも先に国民年金納付書が届くが、すぐに保険料を支払わずにしばらく放置して待つようにしましょう。
「国民年金保険料の免除・納付猶予の申請」はこちらから言わない限り、そんな制度があることすらも窓口では教えてくれませんので、覚えておきましょう。
国民健康保険に関しても加入すると、その時点から保険料の支払が生じます。なお、国民健康保険に関しては一定の所時金額以下の世帯については均等割額が軽減されます。これに関しては特に申請は不要です。
入院前にすべきこと
日本で入院したりする前には必ず高額療養費制度の限度額適用認定書を取得するようにしましょう。
日本で病院にかかった場合、健康保険証を使用すれば自己負担は原則3割だが、それでも医療費の負担が高額になることがあります。これを避けるためには高額療養費制度を利用することができます。この制度では、被保険者の年齢と所得(下記参照)によって一ヶ月の自己負担額の上限が定められています。
区分 | 被保険者の所得区分 (標準報酬月額) | 1ヶ月当たりの自己負担限度額 |
---|---|---|
ア | 83万円以上 | 252,600円+(医療費-842,000 円)× 1% |
イ | 53万~79万円 | 167,400円+(医療費-558,000 円)× 1% |
ウ | 28万~50万円 | 80,100円+(医療費-267,000 円)× 1% |
エ | 26万円いか | 57,600円 |
オ | 低所得(住民税非課税世帯) | 35,400円 |
海外在住で病気の治療のために日本に帰国した場合は、ほとんどの方が区分[オ]の低所得(住民税非課税世帯)に該当することになるかと思います。なので、1ヶ月当たりの自己負担限度額は35,400円になります。
ただし、この制度での自己負担額の上限は健康保険適用分のみになるので、入院時の食事代や差額ベッド代、病衣・タオル代は完全に自己負担になることを覚えておきましょう。
僕は専門家ではないので、海外在住ではあるが日本で所得がある場合(家賃収入、オンラインビジネスなど)はどういった区分になるのかはよく分かっていません。そういったケースの場合は各自治体に確認するようにしましょう。
高額療養制度を利用するには限度額適用認定書の取得が必要となり、市役所(または区役所)の国民健康保険係の窓口で申請すればすぐに貰えます。ただしこの認定書を交付してもらうには、国民健康保険料をきっちり納付しておく必要があります。もし、国民健康保険料が未納付の場合は、その場で未納付分を支払えば、すぐに交付してもらえます。
僕はこの制度を利用して、20日間の入院で総額約50万円と言われていた治療費(手術・入院費込)が約8万円になりました。
入院時に持っていくべきアイテム
海外在住の僕が、日本で入院した際に買っておいて良かったものをご紹介します。
入院の際の参考にしてもらえればと思います。
ジェルボール洗濯洗剤
長期入院の場合は洗濯用洗剤の持参が必須になるわけだが、オススメなのはなんといってもジェルボール洗剤。荷物の邪魔にもならないし、1回の洗濯で1ボールと使い勝手も超楽です。
僕は節約のため病衣のレンタルは術後3日だけ利用し、あとは持参したパンツ、Tシャツ、タオル(各4日分)を使っていました。洗濯は3日に一度の頻度でしていたので、20日間の入院で大体6~7回洗濯をしたことになります。
イヤホン
入院中にスマホで動画視聴やゲームをし、かつ病室が相部屋であれば絶対に欲しいのがBluetoothのワイヤレスイヤホンです。
入院中のストレスを少しでも軽減させたいのであれば、有線イヤホンよりもワイヤレスイヤホンが断然おススメです。寝返りをしてもコードが首回りで絡みつくことがないのが何よりも良いです。
病院では個室/相部屋に関わらずテレビが一人一台あることが多いです。入院中にテレビ視聴(有料)をしたいのであれば、有線イヤホンが必要になるので、これも準備をしておきましょう。
スマホ三脚
入院中の暇つぶしにスマホで長時間動画視聴するなら、スマホスタンドはもはや必須アイテムになります。これがあれば腕が疲れることもないす。
僕はベットの手すりにスマホスタンドを取り付けて、YouTubeやNetflixを一日中見てました。
汗拭きシート
人によっては手術後にひどい寝汗をかく場合があります。日中であれば、看護師の方に言えば濡れタオルを持ってきてもらえるが、夜中だと言いずらかったりします。そんな時に大活躍するのが汗拭きシートです。
入院時に大量にもっていく必要はないが、1~2個は用意しておくと良いです。
僕の場合は術後2日間は寝汗がひどく、全身びしょびしょでとてつもなく不快だったので、買っておいて本当に良かったです。
ポケットWi-Fi
大きい病院であればフリーWi-Fiがあるところが多いです。ただし、接続がタダということもあってスピードはかなり遅かったりします。また、頻繁にWi-Fi ログイン画面が表示されて【同意】ボタンを押す必要もあったりします。
入院中にネットをあまり使わないのであれば病院のフリーWi-Fiで事足ります。ただし入院中にオンラインで仕事をしたり、ガンガンYouTubeやTikTokを見たいのであれば、ここは数千円払ってでもポケットWi-Fiを借りた方がストレスが少なくて良いです。
僕は入院中にクラウドWiFi(100GB)を利用してました。
たこ足コンセント
入院時、個室でない限り使えるコンセントは1個のみが普通ではないでしょうか。他にもコンセントはあるが、これは酸素吸入器やその他の機器を繋げるためのものなので、患者は利用できません。
スマホ1台だけであれば、たこ足コンセントはいらないが、PCなども持ち込むのであれば絶対に準備しておいた方が良いアイテムです。
スニーカー
入院時の履物として最近はかかとのある靴が指定されることが多いです。スリッパやクロックスなどのかかとなしのものは、転倒のリスクがあることから禁止されていることが多いです。
安いものだと日本では1,500円くらいでAmazonで買えるが、海外だと$10以下で買えることもあるので、荷物の邪魔にならないのであれば買って持ってくるのもありかもしれないですね。
僕はBIG Wで買った$8の靴を持っていきました。
退院時にはもちろん捨てています。
小型置き時計
手術を受けた当日や翌日は痛みや気持ち悪さで寝付けないことがあります。今夜中の何時くらいなのか、夜がいつ明けるのかわからないまま、ただベットの上でじっと時間が過ぎていくのを待つのはかなり辛いです。
そんな時に時刻がわかると、気分的にかなり楽になります。夜明けという終わりまでの時間がわかるだけで、痛みで寝付けない苦しさも耐えることができます。
- 荷物の邪魔にならない小型
- 静音(連続秒針
- 価格が高く、高機能である必要はない
最後に…
海外在住者にとって大きな病気は深刻な問題です。病気になったときに、住んでいる国で治療すべきか、日本に帰国して治療すべきかの選択に必ず迫られます。
この時、どちらの選択肢が正しいかに正解はありません。
自分の住んでいる国の医療技術、保険制度、自分の病状、日本に親族がいるかどうかなどそういった事情を鑑みて自分が正しいと思った方を選ぶしかありません。
仮に日本で治療することを選択した場合は、この記事で書いた行政手続きを参考にしてもらえればとは思います。ただし、自治体によっては制度が微妙に違うこともあるので、必ず自分でも自治体のホームページで制度がどのようになっているかを調べるようにしましょう。