日本の夏と言えばジメジメとした梅雨とその後のうだるような暑さですよね。そしてその季節になるとゴキブリがいっきに活動し始め、飲食店でも出現するようになります。
ここオーストラリアのゴールドコーストも例に漏れず、飲食店にはゴキブリがつきものです。店がまだ新しいうちは、ほとんど出現しないと思いますが、3~4年経ってくると、徐々に出現してきます。
ただでさえ飲食店は、一般家庭と違ってゴキブリが増えやすい環境です。そのため、いくら気を付けて清掃をしていてもゴキブリがお店の中で増えてしまいがちです。
さて、店でゴキブリが発生してしまった場合は、当然すぐに対策をとらないとならないです。
対策のやり方をいろいろなサイトで調べると、ゴキブリを駆除するためには侵入経路を塞ぎ、店内にいるゴキブリは捕獲シートで捕まえ、あとは燻煙剤で駆除するとともに毒餌をまくことが有効と書いてあったりします。
それでも一度店内で繁殖してしまうと完全な駆除は難しいと言われており、結局最後は業者に依頼するしかないと書いてあったりします。
ちょっと、待って!業者に依頼しなくても自分で駆除できますよ。
と言うことで、今回は飲食店でのゴキブリ事情と、僕がゴキブリとの長年(2年程度)の格闘の末にたどり着いたゴキブリの駆除方法をお教えしたいと思います。
ちなみに、駆除した際に用いたのが毒餌ですが、ただ単に毒餌を撒いたのでは駆除はしきれません。特別なやり方があるのです。この撒き方をしてからは、ゴキブリを本当に見なくなりました。
※毒餌の撒き方だけを知りたい方は、目次から飛んでいただければと思います。
オーストラリアの飲食店に出現するゴキブリの種類
オーストラリアの飲食店に出現するゴキブリは主にGerman CockroachとAmerican Cockroach の2種類です。それぞれの特徴についてまずは把握しましょう。
German Cockroach(チャバネゴキブリ)
- 体長は11~15mmと小型
- 群れていることが多い
- 一度の孵化で生まれる幼虫の数は30~40匹
- メスは幼虫が孵化するまで、卵鞘を持ち歩く(危険を察知すると切り離す)
- 翅はあるが、飛ぶことはできない
- 薬剤に対して抵抗性を持つものもいる
今回の主役のゴキブリです。主に飲食店などで発生し、様々な被害をもたらします。驚異的な繁殖力を持っているので、放っておくとアッという前に数が増えてしまいます。
また、チャバネゴキブリは殺虫剤に耐性をもつ個体が稀に存在します。そういった個体が繁殖してしまうと、いくら殺虫剤を散布してもいつまでもしぶとく生き残ってしまいます。なので、一度発生してしまうと駆除が難しいと言われています。ここオーストラリアでは専門業者でさチャバネゴキブリの完全な駆除をあきらめがちです。実に厄介な種類です。
American Cockroach(ワモンゴキブリ)
- 体長は30~45mmと大型
- 単独で見かけることが多い
- 一度の孵化で生まれる幼虫の数は6~18匹
- 稀に飛ぶ
家の中で出現するとパニックになるのがこのゴキブリです。
飲食店では、朝一店に行くと床でひっくり返って瀕死状態の個体を稀に見かけます。
American Cockroach(ワモンゴキブリ)は主に閉店後に外からやってくるだけなので、見た目が相当気持ち悪いですが、飲食店にとってはそれほど問題になる種類ではないです。
ゴキブリを増やさないための基本的な予防・対策
飲食店でゴキブリを駆除する前に、まずは発生(繁殖)させないための基本的な対策をしっかり取りましょう。この基本的な対策を怠ると、いくら駆除してもいたちごっこになってしまいます。
キッチンは清潔に保つ
キッチンには食材・生ごみ・飛び散ったソースや油などがいたるところにあります。ゴキブリにとっては、天国のような場所です。こういったものは営業中や営業後の清掃で徹底的に取り除いて、常に清潔な状態が保たれているように心掛けましょう。
ダンボール類はすぐに廃棄
ダンボールはゴキブリが好む温度・湿度・暗さが全て整っているので、ゴキブリが寄ってきます。店内に放置していると、知らない内にゴキブリの巣になっているなんてこともあります。
もし店内にダンボールを置いているようでしたら、速やかに廃棄しましょう。
食料品や缶ジュース、コンテナ等を店内で保管するときにはダンボールを決して使わずに、プラスチックコンテナを使用するようにしましょう。
食品は密閉容器にいれて保管
食材は必ず密閉容器に入れて保管するようにしましょう。また、常温で保存できる野菜(玉ねぎ等)などは、プラスチックコンテナにいれて保存するか、冷蔵保存するようにしましょう。
隙間はシリコンシーラーで塞ぐ
飲食店は時間の経過とともに経年劣化します。壁のタイルにはひびが入ったり、シンク周りのシーリングしている箇所ははがれてきたりします。
ゴキブリはわずか数ミリの隙間があれば、そこを通り抜けることができます。特に飲食店で厄介なチャバネゴキブリは小型のゴキブリであるため、わずか1mmの隙間でも通り抜けられます。このため、タイルのひび割れやシンク周りのシーリングが剥がれた箇所に入り込んだりします。
シリコンで隙間を埋め際には、必ずシーリング仕上げツールを使用しましょう。
これを使うのと使わないのとでは、仕上げの見た目が大分かわってきます。
当然、使用しなければシリコンの部分がデコボコして見た目が悪いばかりか、そこにゴキブリの赤ちゃんが住み着く可能性もあります。
シーリング仕上げツールを使えば、ど素人でもキレイにシーリングできますので、絶対に使うようにしましょう。
オーストラリアで買えるゴキブリ用殺虫剤の種類
日本にも色々な種類のゴキブリ用の殺虫剤・毒餌があるように、ここオーストラリアにも沢山の種類が売られています。大体のものは一度は使用しているので、ここで簡単にレビューしたいと思います。
殺虫スプレー缶タイプ
ゴキブリが出現した際の強い味方が殺虫スプレーです。ちなみに、オーストラリアで主に売っているゴキブリ用の殺虫スプレーメーカーは『Raid』『Mortein』『Atlas』の三社です。
『Raid』『Mortein』は主にColesとWoolworthsで購入できます。値段は$8~10程度。
『Atlas』はALDIで売っている殺虫剤で値段は$2.5~3程度。
内容量も効き目もどれも大して変わらないので、ここは値段が断然安い『Atlas』を買うことをおすすめします。
ちなみにどの殺虫剤も有効成分はイミプロトリンとシペルメトリンです。これらピレスロイド系の殺虫剤は、昆虫にとって即効性の神経毒として作用(麻痺を引起す)します。
日本で有名なゴキジェットプロ(アース製薬)の有効成分はイミプロトリンであり、同じ有効成分が使われていることから、これらもゴキブリの動きを止めることに関しては絶大な効果を発揮します。
ほとんどのスプレー缶には『PROTECTS FOR UP TO 6 MONTHS(最大6ヶ月の防虫)』と書いてありますが、これは全く期待できません。
これらの殺虫剤による防虫効果はせいぜい1日位ではないかと個人的には思っています。なので、防虫効果に関しては期待しないようにしましょう。
ちなみに購入する場合は、『Odourless(無臭)』と書いてあるものが良いです(無臭と言いながら、柑橘系の臭いはします)。
また、ノズルがあるものをおすすめします。
ノズルがある方が$1くらい値段が高くなるが、ピンポイントでゴキブリを狙えるのと、隙間に入ったゴキブリもノズルを突っ込めば倒せるので、こちらがおすすめですね。
ゴキブリ駆除用液体殺虫剤(散布剤)
ペストコントロール業者はゴキブリ駆除の際に駆除用液体殺虫剤を使用しています。
これがどれだけの効果があるのか興味があったので、同様のもの(PEST XPERT)を購入して使ってみました。
こちら有効成分はエスフェンバレレート(CAS number: 66230-04-4)で、この化学物質はチャバネゴキブリに対して、高いフェンバレレート光学異性体の殺虫活性およびノックダウン活性があるようです(なのこっちゃ・・・)。
実際に使用した感想ですが、正直なところ効果がどれほどあるのかがわかりませんでした。値段がそこそこ高い割に目に見える効果がなかったので、購入はあまりおすすめしません。
自動噴霧殺虫機
噴霧間隔を12時間もしくは24時間に設定できる自動噴霧殺虫機。
冷蔵庫や冷凍庫の裏に置いとけば、そこに潜むゴキブリを退治できると思い、購入しましたがまったくダメでした。
家の玄関等に置けば、ゴキブリ退避に効果があるのかもしれないが、店内で繁殖しているチャバネゴキブリには全く効果がありません。
時間が経過して、中にセットするスプレー缶が空もしくは電池が切れて作動しなくなると、この自動噴霧殺虫機そのものがゴキブリの恰好の溜まり場になります。
飲食店での使用はおすすめしません。
ゴキブリ用毒餌剤
毒餌剤にも色々な種類があります。以下に紹介しているのは、これまでに実際に使ってみたものになります。
置き型容器タイプ
日本でもよく見かける容器タイプの毒餌になります。容器が黒いので、毒餌を食べているのか食べていないのかが判別できないところがマイナスポイントです。
こちらは一時期大量に仕掛けたことがありますが、ゴキブリが減ったのかどうかよくわかりませんでした。
容器タイプとして日本ではブラックキャップ(アース製薬)が有名で、駆除効果が凄いと聞いたことがあるので、日本から取り寄せて使ったこともあります。
確かにはじめの内は効果が凄かったですが、2~3ヶ月も経つと、ブラックキャップの容器がゴキブリの巣になっていました。
棒状タイプ
棒状のプラスチックに毒餌がついているものになります。有効成分はFipronil(フィプロニル)で、これはブラックキャップ(アース製薬)と同じ有効成分になります。
こちらも試したが、効果はよくわかりませんでした。設置してから数日経過すると、毒餌部分が乾燥し始め、そうなるとゴキブリはもはや見向きもしなくなるようで、食べている形跡は全く認められませんでした。
ジェルタイプ
ジェルタイプの毒餌もいろいろな種類が出ています。どれも同じようなものかと思いきや、有効成分がそれぞれ違っています。
主な有効成分は
- Indoxacarb(インドキサカルブ)
- Fipronil(フィプロニル)
- Abamectin(アバメクチン)
- Pyriproxyfen(ピリプロキシフェン)
各有効成分のゴキブリに対する作用機序は違えど、どれもチャバネゴキブリに対して駆除効果を示す農薬になります。
実は、僕の店でほぼ完全にゴキブリを駆除した際に用いたのが、このジェルタイプの毒餌剤です。
なお、チャバネゴキブリは殺虫剤に対して耐性を持つことがあるので、効きづらい製品がある場合は違った有効成分を使用している製品を選択してみると良いです。
捕獲シート(ゴキブリホイホイ)
日本ではおなじみのゴキブリホイホイ。中には足ふきマットまでついているのが売られていますよね。オーストラリアでもゴキブリホイホイは売られてはいますが、日本ほどどこででも買えるわけではないです。
今回はオーストラリアで買えるゴキブリホイホイを二つほど紹介。
まず、左のが形状が日本で売っているのとまったく同じものになります(足ふきマットなんてオシャレなものは当然ありません!)。こちらはネットで購入できるものになっています。店舗でこの形状のものは見たことがありません(日本食材店ではたまに見かけます)。
そしてもう一つが右のものになります。こちらはBunnings(オーストラリアにあるホームセンター)で売っているものです。見るからにチープな作りです。捕獲されたゴキブリが横から丸見えというゴキブリが苦手な人への配慮がほぼ皆無な商品です。
ゴキブリホイホイの形状はさておき、飲食店にとってこれは必須アイテムになります。
くん煙殺虫剤
オーストラリアではInsect Control Bomb(防虫爆弾)と言われています。
日本だと『煙タイプ』『水タイプ』『霧タイプ』といろいろな種類がありますが、オーストラリアで見かけるのはほとんどが『霧タイプ』になります。
『霧タイプ』は火災報知器に反応しないというメリットがあるものの、個人的には薬剤の拡散力に関して他のタイプよりも弱い印象があります。実際に使用した時も、壁の隙間にいるゴキブリに対しては薬剤が行き届いていないんじゃないかという印象でした。
オーストラリアのペストコントロール業者(害虫駆除業者)
オーストラリアでは飲食業を営む場合、定期的にペストコントロール業者による害虫駆除の実施が義務付けられています。
害虫駆除の費用は店の規模(広さ)と業者にもよりますが、100㎡くらいだと一回の費用が$80~$120位が相場ではないでしょうか。
業者によっては、超適当に薬剤だけ散布して、ものの数分で帰ってしまう業者もおります。オーストラリアではちゃんとした仕事をする業者を見極める必要があります。
さて、そんなペストコントロール業者も音を上げるのがチャバネゴキブリの駆除です。
業者によってはゴキブリ駆除に対して保証期間(期間中ゴキブリが出た場合は、再度無償で薬剤を散布してくれる期間)を設けているところがありますが、ことチャバネゴキブリに関してはその期間が短かったり、保証期間そのものが設定されていなかったりします。
これからもわかるように、チャバネゴキブリの駆除は業者も諦めるほど一筋縄ではいかないのです。
僕の店では、チャバネゴキブリが酷かったときは、毎月$80かけて業者を呼んでいましたが、結局駆除しきれませんでした。
今思えば、無駄な出費でした。
ゴキブリを店内から駆除できた具体的な方法
今回ご紹介するのは、飲食店内で繁殖してしまったチャバネゴキブリの駆除方法です。
それではさっそくやり方を説明していきます。
【①ゴキブリ用毒餌剤を用意する】
ジェルタイプのゴキブリ駆除用毒餌を用意します。
種類はいろいろあり、有効成分も異なりますが、効果はどれもあると思います。
僕が用いたのはBUNNINGSで売っている『Cockroach 30g Pestxpert 2 In 1 Cockroach Bait』です。容量が30gもあるので、かなりお得です。
【②毒餌をまく曜日を決める】
毒餌は週一回決まった曜日にまくようにします。
営業しているお店に定休日があれば、その前日が最も良い日になります。
【③毒餌を設置】
その日の営業が終了し、床掃除も終わった後に毒餌をまくようにします。
設置する場所は床です。極少量のジェルタイプの毒餌を数か所(キッチンの規模にもよるが、大体3~5か所程度)に設置します。
おすすめの場所は、
- シンク下
- 冷蔵庫・冷凍庫の下
- 排水溝の付近
- ゴミ箱付近
冷蔵庫や冷凍庫の下にまく場合は、あまり奥の方に設置しないようにしましょう。
壁やタイルの隙間等にも毒餌を置きたくなりますが、見た目が汚くなるのでやめましょう。はっきり言ってしまえば、床だけで十分です。
【④毒餌の除去】
翌営業日の夜、床清掃する際に毒餌をきれいにブラッシング等で取り除きましょう。
毒餌は設置してから長い効果を発揮すると言われていますが、僕の感覚ではこのタイプの毒餌は1~2日経ってしまうと乾燥してカピカピになりゴキブリが食べなくなります。置いたままにしていても見た目が汚いだけなので、翌営業日には清掃して取り除きましょう。
「たった一日で大丈夫なの?」と思いがちですが、その時キッチンにいる大半のゴキブリは夜中に食べに来ていると思って大丈夫です。
【③④を毎週繰り返す】
『毒餌設置⇒翌営業日に毒餌を除去』これを毎週決めた日に繰り返します。
なんだ、そんな簡単なことか!と思うかもしれないですが、ゴキブリを駆除できていないところはこれをやっていないと思います。
実際、僕もかつては一度毒餌を設置した後は、それをそのまましばらく放置していました。けど、放置していた毒餌は乾燥してしまってゴキブリももはや食べなくなっていました。生き残った数匹や、毒餌をまいた時まだ卵だったものがその後孵化して、結局はまた増えてしまうというのを繰り返していたと思います。
毎週新鮮な毒餌をまくことで、例え1回目で食べずに生き延びたゴキブリも2回目、3回目では食べてしまい死んでしまいます。
これを続けていくと、3~4週目あたりでゴキブリを店内で見なくなったなと実感できるようになると思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。やり方を知ってしまえば、そんな簡単なことか!と思ってしまいますよね。けど、このやり方はネット上どこを調べても書いていないやり方になります。
知り合いの飲食店でも同じやり方を試したところ、そこでもゴキブリを見なくなったそうです。なので、この方法を実践すると効果は確実にでると思います。
- ジェルタイプのゴキブリ駆除用毒餌を用意する
- 営業終了後にキッチンの床、数か所に少量の毒餌を置く
- 毒餌を置いた次の日の夜、床清掃をする際に毒餌は必ず取り除く
- 1~3.を週1回、決まった曜日に繰り返す(定休日があれば、その前日が良い)
※ゴキブリを見かけなくなっても、毎週一回新鮮な毒餌を設置し続けること!
飲食店を経営していて、繁殖力の強いチャバネゴキブリで困っているようであればぜひ一度試してみてください。
このやり方で毒餌を設置するようになってからはゴキブリがまったくでなくなったので、ペストコントロール業者への害虫駆除依頼も3ヶ月に一度しか依頼(形式上の理由のため)しなくなりました。
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